代々木ではたらく

これからの働き方を考える

時間をゆっくり流す方法(中篇)、

東京はよく晴れている。気温は低いものの日向は暖かい。僕はいつも通り出勤している。仕事もプライベートもごちゃ混ぜ。オンもオフもない。これどうなの?とも思うけど、仕事面白いし、仕事場にいると落ち着く。仕方ない。今日はこれから始まる仕事の下準備と、事務処理を少し。弊社は給料日が15日なので、その手続や書類作りをやっている。1月から社員の基本的な給料を上げることにしている。給料の調整には色々な理由があるけど、大きな理由は幸せに暮らして欲しいということに尽きる。各個人のプライベートに対して僕ができることなんて給料を上げることくらいだからね。会社としてできることはやっていこうと思う。代わりに僕の給料を半減させた。トータルでかかる月の人件費は少し下がる。社会保険も凄まじいし新事務所で家賃も増えている。ちょっと会社にお金を残しておかないといけない。

 

今夜のネタは昨日に引き続き、時間をゆっくり流す方法について考えてみたい。日曜日の夜、どんな時間を過ごしているだろうか?。今夜もひとつお付き合いのほどよろしくお願いします。

 

子どもの頃、冬の季節にはよくスキーに連れて行ってもらった。実家は関東平野にあり、新潟県のスキー場に行く。車で行くこともあった。関東から新潟に向かう高速道路には、群馬県新潟県を繋ぐ関越トンネルがある。全長10kmある長いトンネルだ。子どもの頃の僕はこのトンネルが大嫌いだった。狭い場所が怖い、閉所恐怖症だった(エレベーターとかトイレの個室もこわかった)。そんなこともあり、この10kmあるトンネルがとてもとても長く感じていた。永遠に抜けることができないような気がして、早く終わってくれと恐怖で震えていた。その当時、このトンネルがどのくらいの長さなのか知らなかった。

 

この「どれくらいの長さか知らない」ということが時間を長く感じさせるような気がする。何が起こるかわからない緊張状態が、時間の流れも敏感に感じ取らせる。子どもの頃にはその感覚が強いように思う。周りは知らないことだらけ、常に新しいことが起こり、新しい発見がある。大人になると、だいたいのことは知っている。経験したことも蓄積するし、TVで見たとか、ネットで見たとか。色々な手段として知っている。オーロラを実際に見たことがなくても、色々な情報をつなぎ合わせて、だいたいどんなものか想像できる。宇宙に行ったことがなくても、プールの無重力感、NASAの映像、飛行機の感触、などからなんとなく想像できる。だいたい分かってしまえば、TVや写真だけでいいやと思ってしまう。新しいことをやらなくても生きていけるし、毎日のサイクルで精一杯。なんとなく過ごす時間で人生が埋め尽くされてしまう。気付いた時にはもう、、終活ノートの前で途方に暮れているということになりかねない。

 

そこで、ここからが本題「時間をゆっくり流す方法」だ。前置きが長かった。新しい発見を常にしていけば、時間はゆっくり知覚されるのでは?と思う。今までの人生でやったことがないことは?なんて、大げさなものじゃない。映画とか本とかは毎月新しいものが出てくる。そういうのでいい。僕がオススメなのは、行ったことがないご飯屋さんに行くことだ。これはかなりいい。五感全てに新しい感覚をぶち込むことができる。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。全て新しい刺激を受ける。初めて見る空間。初めて聴くBGMとノイズ、大将の声。初めて触れる椅子とテーブル。初めての味。初めての香り。全て新しい。そして、新しいお店に入る瞬間のある種の恐怖。どんな店かな?って思う。僕は本当に怖い。初めて会う店員さんと対面する。それら全てが混ざり合い、いい緊張感でご飯を食べる。

 

ちょうど昨日行ったお店がそれだった。マンションの1室を改装した小さいお店。ドアの前まで行って立ち尽くした。開けるのが怖い。本当に帰ろうと思った。でも、ここまで来て帰るわけにもいかない。ドアノブに手を掛け、ゆっくり回した。10畳くらいだ。すぐそこに大きいテーブルがあった。テーブルの反対側はキッチンになっている。僕1人と、店員さん1人だけの空間。小さい土鍋で炊いた真っ白なご飯と、キャベツの味噌汁。帆立の小鉢。何も話すことはない。いい緊張感。静かで、ゆっくりした時間が流れた。